
皆さんは、精米について考えながら注文されていますでしょうか。
今回は、精米について詳しく解説しながら、よりおいしく日本酒が味わえるような記事を書きましたのでご紹介していきますね
1.精米とは?
精米=米の外側を削り中心の白いでんぷん質(心白しんぱく)を残す工程。
日本酒造りでは、雑味の原因となる外層部(タンパク質・脂質・ミネラル)を取り除くために行われる。
なぜ精米するのか?
米粒の成分は外側ほど“雑味成分”が多いということがわかっています
米の層構造
外側ほど、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラル、灰分が多いです。
また、内側の中心(胚乳=でんぷん)には、
- 澱粉(アミロース・アミロペクチン)が豊富
- 雑味成分が少ない
- 酒の味がクリアになる
そのため、削るほど
→ 雑味が減る
→ 香り・味が純度の高い酒になる(ただし米1つあたりが軽くなる傾向に)
※医者の豆知識
精米の技術が上がったことで、米の外側に含まれるVitB1が減って、戦時中に脚気が増えたともいわれています
精米歩合とは?

精米後に残った米の割合(%)のことを指します
例:
- 精米歩合 70% → 30%削った
- 精米歩合 50% → 半分削った
- 精米歩合 23% → 77%削った(大吟醸の代表的数値)
精米歩合=残った割合です(削った割合ではない点に注意)
精米歩合による味の違い
精米は香り・味に明確に影響する。
精米歩合味の特徴(確実な傾向)70%米の旨味・コクが出やすい、やや雑味が残る60%バランスがよく、純米酒に多い50%(吟醸級)雑味が少なく、香りが華やか35〜23%(大吟醸級)きわめてクリアで香り中心、軽快と言われています。
※削るほど軽く・華やかになる。
具体的な精米による効果について
・雑味成分(外層)が減る
・タンパク質由来の苦味・渋味の減少
・脂肪由来の劣化臭のリスク低下
・デンプン純度が高い部分だけ使うためクリアで繊細な味になりやすい(可能性)
・高精白により酵母が生成する香気成分(酢酸イソアミルなど)が発現しやすいことで吟醸香が出やすくなる
※ただし、米の個性は削るほど弱くなる傾向にあります
精米は酒質を決める最重要工程のひとつ
日本酒造りの専門家は、
「精米で酒の50%が決まる」と言うほど重要。
理由として、
- 発酵時のアミノ酸量が変わる
- 酵母の代謝(エステル生成)に影響
- もろみ温度管理の難易度が変わる
- 香味成分の量が変化
- 吸水性が変わり蒸し上がりも変わる
精米は“香り・味・発酵性・吸水性”すべてに直結します
精米の最新技術について
・ 無洗米レベルの“完全除外精米”
外層をより均一に削る技術が進歩。
・高精白(23%など)
長時間(48〜72時間など)連続運転が可能になったことが挙げられます。
これは、砥石ロールの改良(表面構造の均質化、摩擦の安定化)、米が回転する流れ(流動パターン)の最適化、衝撃を与えないテンション制御によって、米に過度の衝撃がかからず、割れにくいようになりました
・低温精米
熱損傷を回避し、米質の変化を最小化できるようになっています
・山田錦・雄町など品種別の専用精米プログラム
米粒サイズ、米の中心の位置などに合わせて最適な削り方を選択可能に
精白はなぜ大吟醸で重要なのか
大吟醸は精米歩合 50%以下
→ つまり、玄米の“半分以上”を削る
→ 外側の雑味成分をほとんど除去
→ 香りが華やかで繊細なタイプに向く
精白が吟醸造りの前提条件である理由はこれ。
2.精米歩合による日本酒の名称
国税庁告示「清酒の製法品質表示基準」による清酒(日本酒)というのは、決まっており、以下のようになっています。

また、ポイントは以下のようになっています
精米歩合の数字(50%・60%・70%)は法令で明記された“下限”
- 大吟醸 → 精米歩合50%以下(50%以上削る)
- 吟醸・純米吟醸 → 60%以下
- 本醸造 → 70%以下
“特別”のつく名称には『客観的に特別と示せる理由』が必須
国税庁の告示で以下が認められている:
- 精米歩合が特に低くてもよい
- 特別な製法(例:手作業割合が多い、仕込み方法が特殊)
※数値の義務は「60%以下であることが多い」が、“特別理由”の定義は数値ではなく性質による。
醸造アルコール使用量の上限は “白米重量の10%以下”
仕込みに使った白米(=原料の米)の重さの10%までしか、醸造アルコールを加えてはいけない
という法律上の上限のこと
本醸造・吟醸で共通です。
こうじ米使用割合はすべて「15%以上」
- これは特定名称酒の共通要件
- 酒母のこうじ米割合ではなく「使用白米全体に対するこうじ米比率」
※補足 こうじ米について
そもそも“こうじ米”とは?
米こうじを造るための米のこと。
蒸した米に麹菌(Aspergillus oryzae)を繁殖させることでできる。
麹は日本酒の発酵において
- デンプン → 糖(グルコース)に分解する酵素(アミラーゼ)
- たんぱく → アミノ酸に分解
などを行う“発酵の司令塔”の役割を果たします。
なぜ「15%以上」なのか
1. 糖化を進めるために必要な最低限の麹量
麹の酵素量が不足すると:
- デンプンが十分に糖化しない
- 結果として酵母が育たない
- 発酵が不安定になる
多すぎても香味が強すぎるため、
15%は“発酵を安定させるための最低ライン” として設定されている。
2. 品質維持のための基準(特定名称酒だけに要求される)
特定名称酒(吟醸・純米・本醸造など)は
“普通酒より高品質である”ことを保証するカテゴリー。
麹を一定量以上使わないと
- 雑味が出やすい
- 発酵力が弱い
- 風味のバランスが不安定
となるため、国税庁が「最低15%」を明示的に規定している。
3. 伝統的な日本酒造りの標準値に基づく(経験+科学)
江戸時代〜昭和初期までの酒造りの経験則でも麹歩合(麹の割合)は
15〜25%が標準でした。
これより低いと発酵が弱くなったため、“最低ライン”として15%が法令に採用されています。
以上、こうじ米についてでした。
3. 精米歩合でわかるランク
精米歩合によって、以下のように分かれています。
大吟醸(50%以下)> 吟醸(60%以下)> 本醸造(70%以下)> 純米(制限なし)
ただし重要な注意点として、精米歩合が低いほど高級という“市場の一般認識”はありますが、純米酒に精米制限がない=純米酒が低ランクという意味ではありません。
なぜなら、米の質・麹・酵母・造りで味は大きく変わるためです。
そのため、精米歩合に関わらず味の好みは人それぞれです。
4. 精米歩合でランクが決まる理由
① 精米していない外層の脂肪・たんぱく質が雑味となりやすいため
② 吟醸造りでは高精白が香り成分形成に影響するため吟醸香(酢酸イソアミルなど)は高精白で生成されやすい
※精白:玄米の外側を削って白米にすること(精米の行為そのもの)
③ 税務処理上の明確化特定名称酒=酒税法上の区分“課税根拠を明確にするための客観的基準”として数値を採用されています。
医師としての推奨量
日本の“節度ある飲酒”は 純アルコール20g/日とされています。
つまり、日本酒であれば、1合(180mL)程度(アルコール度数15%で計算)と言えます。
ただ、他人と飲みに行ったときになかなか1合だけで済むということはあまりないですよね。
そんな時には、休肝日を作るなど肝臓を休ませてあげることが重要になってきます。
終わりに
精米歩合という一つの数字の裏には、米の構造、発酵の仕組み、そして蔵人たちの技術と工夫が凝縮されています。
ラベルやメニューに書かれている種類を少し意識するだけでも、日本酒の味わいはより立体的に、より深く感じられるはずです。
ぜひ次に日本酒を手に取るときは、精米歩合にも目を向けながら、ご自身の好みに合う一杯を探してみてください。日本酒の奥深さは、知れば知るほど、きっと楽しくなってきます!
