産業医学的に考える二日酔い対策 ― なぜ起こるのか、どう防ぎ、なったらどうするのか ―

2日酔いというのは、成人してから何度味わったでしょうか。

毎回二日酔いになる度にもうお酒を飲みたくないと思いながら、過ごすこともありました。

今回は産業医学的に、そもそも二日酔いにならないようにするためにはどうしたらいいか。二日酔いになった場合の対処法について調べてきましたのでご紹介させて頂きます。

目次

二日酔いとは?

医学的に説明すると、

二日酔い(alcohol hangover)とは、飲酒後に血中アルコール濃度がほぼゼロに戻った後でも残存する、身体的・精神的な不快症状の集合体

という風に説明されます。

もう少しわかりやすくいうと、アルコールの代謝過程で起こることが身体に悪影響を起こっている状態のことです。

経験されたことがある方はよくわかっていますが、以下のようなことが起こります。

① 炎症反応の亢進

  • ① 炎症反応の亢進し、IL-6、TNF-α、CRP などの炎症性サイトカインが上昇することで、頭痛、倦怠感、集中力低下

② アセトアルデヒド(毒性物質)

エタノールは
・エタノール → アセトアルデヒド → 酢酸
の順に代謝されます。

アセトアルデヒドは強い細胞毒性・血管拡張作用をもつことで身体に様々なな影響を及ぼします。

症状としては、頭痛、動悸、悪心、不快感などがあります。

 これは血中アルコールがゼロでも影響を及ぼしますので、血中アルコール濃度とは関係がないことが重要です。

③ 脱水・電解質バランス異常


アルコールによる抗利尿ホルモン(ADH)抑制されることで、  頻回の利尿がおこり、脱水やNa⁺ / K⁺ バランス変化、口渇、立ちくらみ、頭重感が起こるとされています。

④ 睡眠構造の破綻

アルコールは入眠を早めるものの、後半の REM 睡眠を抑制することで熟眠感の欠如や日中の眠気・集中力低下などが起こるといわれています。

以上のことから、様々な身体に対する影響があることがわかっています。

2日酔いにならないためには

現実的には、2日酔いにならないということは、飲酒量を減らす以外で確実な効果というのはありません。

しかし、いくつかの対策をすることで二日酔いをなりにくくする効果があるものはありますので紹介していきますね。

① 飲酒量を減らす

飲酒量と二日酔いの重症度は
用量依存的に増加することが一貫して示唆されています。

したがって、唯一、確実性が高い対策は「飲む量を減らす」ことです。

② 空腹で飲まない

食事、とくに脂質とタンパク質はアルコール吸収を遅らせます。その結果として、血中アルコール濃度の急上昇を抑制することができます。

代謝速度は変わりませんが、ピークを下げることで悪影響を減らすことができます。

Evidence-based survey of the elimination rates of ethanol from blood with applications in forensic casework – PubMed Reliable information about the elimination rate of alcohol (e pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

あわせて読みたい
アルコールは何時間で抜ける?医学的に正しい代謝時間と注意点 皆さんは、お酒が入ってどれくらいの時間で車で運転ができますかご存じでしょうか。 意外と夜に飲んでおけば、翌朝にはお酒は抜けていると思われている考えがちだと思い...

③ 水分補給を適切に行う

あらかじめ水分補給をすることで、次の日に起こる脱水、口渇、立ちくらみを軽減する可能性はあります。

しかしこの論文より

飲酒中または飲酒直後の水分摂取は、翌日の二日酔いの予防にわずかな効果しか与えませんでした。また、二日酔い中の水分摂取量は、二日酔いの重症度や喉の渇きの変化とは関連がありませんでした。したがって、水分摂取は二日酔いの緩和に効果的ではありませんでした。

であり、水分摂取は明らかに有効ではありませんが、わずかに効果があることがわかっています。

Alcohol hangover versus dehydration revisited: The effect of drinking water to prevent or alleviate the alcohol hangover – PubMed The alcohol hangover is a combination of negative mental and pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

④ 寝る直前まで飲まない

アルコールは後半の REM 睡眠を抑制するため、就寝直前の飲酒を避けることで睡眠障害による症状を軽減できるともいわれています。

特に以下の論文によると、アルコール摂取で鎮静効果による一時的な睡眠はみられるものの耐性ができて、睡眠の質が下がることで睡眠薬の使用や日中の睡眠感が出現することがわかっています。

Sleep, Sleepiness, and Alcohol Use – PMC The study of alcohol’s effects on sleep dates back to the lat pmc.ncbi.nlm.nih.gov

⑤ 「効く」と言われるものに期待しすぎない

ウコンやサプリメント、特定の飲み物というのはアルコールの代謝を早めたり、二日酔いを防ぐことを示したメタアナリシス以上の論文というのはでておりません。

もちろん企業努力をされていると思いますので、まったく効果がないわけではありませんが、期待しすぎないことが大事かと思います。

Evidence-based survey of the elimination rates of ethanol from blood with applications in forensic casework – PubMed Reliable information about the elimination rate of alcohol (e pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

もし、2日酔いになってしまったら、、、

①水分・電解質補給

  • 水+ナトリウムを含む飲料(経口補水液が理想)
  • 少量を頻回に摂取する
  • 脱水補正が症状軽減に寄与する可能性は一貫して示唆
    しかし、「二日酔い症状を改善する」と明確に結論づけたメタアナリシスは存在しません。

②睡静・追加睡眠【確実性:中等度】

  • 無理な活動を避ける
  • 短時間の追加睡眠(昼寝)
  • アルコールは深睡眠(徐波睡眠)とREM睡眠を阻害
  • 睡眠回復が頭痛・倦怠感を軽減する可能性

があります。

あわせて読みたい

一方で、睡眠による直接的な二日酔いの効果というのは示されていないことに注意が必要です。

③軽食(特に糖質)摂取

消化の良い糖質中心(お粥・バナナ・トースト)に食べ物を摂取することが低血糖による頭痛や倦怠感、ふらつきを改善することがあります。

ただし、これも食事介入で二日酔いが改善するというメタアナリシス以上のエビデンスは見られませんでした。

Alcohol Hangover: Mechanisms and Mediators – PMC Hangovers are a frequent, though unpleasant, experience among pmc.ncbi.nlm.nih.gov

④鎮痛薬について

  • アセトアミノフェンは原則避けることが重要です。

アセトアミノフェンは肝臓によって代謝されますが、アルコールも同様に代謝されていますので、肝機能に悪影響を及ぼす可能性があるためです。

NSAIDs(イブプロフェン等)は一方で、アルコールによる消化管へ攻撃をしていますので、痛み止めによってより悪影響を及ぼす可能性も見られます。

⑤迎え酒は絶対にしない

迎え酒(起きた時に二日酔いのままアルコール摂取をすること)で、一時的に楽になっても、アセトアルデヒド蓄積や脱水や炎症を悪化させることで、回復を確実に遅らせる危険性がありますので、迎え酒はしてはいけません、、、!

Alcohol Hangover: Mechanisms and Mediators – PMC Hangovers are a frequent, though unpleasant, experience among pmc.ncbi.nlm.nih.gov

二次予防⑥:サプリ・点滴は?

  • ビタミンB群、C
  • グルタチオン
  • 二日酔い点滴

などがありますが、結論として、有効性を支持するメタアナリシスは存在しません。

★エビデンスがあるものではなく、理にかなった食べ物

最後に、高いエビデンスレベルで効果が示されてはいませんが、理にかなった2日酔いに対する食事について紹介していきたいと思います。

① 糖質(お粥・トースト・バナナ)

目的:低血糖対策

アルコールはし糖新生を抑制 → 低血糖を引き起こす。低血糖自体、頭痛・倦怠感・集中力低下を悪化させます。

したがって、低血糖を改善させるために糖質を

また、この時にVitB1を摂取することは一つ参考にしていただけたらと思います。

根拠としては、糖質の代謝とアルコールの代謝でどちらも必要になるビタミンがVitB1ですので、「そば」など豊富なものをたべるのがおすすめです。

ただ、こちらに関してはあくまで確実な根拠というのは存在しませんのでご注意いただけたらと思います。

② 電解質を含む食品(味噌汁・スープ)

目的:脱水・電解質異常対策

  • 二日酔いの主要因の一つは脱水
  • ナトリウム補給は理論的に妥当

ただし、こちらも食品介入で症状改善を示した高次エビデンスは存在しません。

③ 消化の良いタンパク質(豆腐・卵)

目的:回復時の負担軽減

・胃粘膜はアルコールでダメージを受けている
・高脂肪・刺激物は悪化要因です

④ 果物(特に果糖を含むもの)

よく言われる通説として、二日酔いに果物がいいとされています。

しかし、アルコール分解促進効果は理論上ごく軽微であり、症状改善を示したメタアナリシスは見られませんでした。

水分+糖質補給としてはOK、治療目的では期待しないことが必要です。

③避けるべき食べ物(悪化防止=二次予防)

こちらは比較的一致した見解があります。

❌ 脂っこい食事

  • 胃排出遅延
  • 吐き気・胃痛悪化

❌ 香辛料・刺激物

  • 胃粘膜障害を助長

❌ 迎え酒

  • 症状を長引かせる(確実)

④「ウコン・しじみ・サプリ」は?

  • プラセボ効果の可能性を否定できない
  • 二次予防としては優先度は低いと考えます。

終わりに

二日酔いは「気合」や「根性」でどうにかなるものではなく、
炎症・代謝・睡眠・脱水といった生理学的な変化が重なって起こる、れっきとした身体反応です。

現時点の医学的エビデンスを踏まえると、
二日酔いを確実に防ぐ方法は「飲酒量を減らすこと」以外に存在しません
一方で、飲み方やタイミング、睡眠、水分、翌日の過ごし方を工夫することで、
「なりにくくする」「悪化させない」ことは可能であることもわかっています。

「これを飲めば大丈夫」「これを食べれば治る」といった魔法のような方法はありませんが、
科学的に無理のない選択を積み重ねることが、身体へのダメージを最小限にする近道です。

仕事や運転、重要な判断を求められる立場の方にとって、
二日酔いは単なる不調ではなく安全管理の問題でもあります。
ぜひ今回の内容を、飲酒との付き合い方を見直す一つの材料として活用していただければ幸いです。

「楽しく飲む」ためにも、
翌日まで含めて自分の身体を守る飲み方を意識していきましょう。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次